2019年5月に開催された会議で、ACAP(The Agreement on the Conservation of Albatrosses and Petrels*1):ミズナギドリ目鳥類の保全に関する国際協定、日本は未加盟だが、加盟国会議にオブザーバーとして参加)は、この協定が2001年に調印された日に因んで、6月19日を「世界アルバトロスデー」と定め、世界のミズナギドリ目鳥類が直面している苦境を説明し、それらの保全活動が急務であることを世界の人々に呼びかけることにしました。第1回は2020年に行なわれます*2)。(『協定の対象種対象種』)

 世界には約360種の海鳥類が生息し、そのうち110種、すなわち約30%の存続が危ぶまれています。海鳥類は、鳥類のうちでもっとも絶滅の危機に瀕しているグループの一つです。海鳥類のうち、お互いに近縁で、潜水して水中を“飛翔”するペンギン類(18種中10種が絶滅危惧、56%)と抜群の空中飛翔力をもつミズナギドリ類(140種中64種、46%)が、とくに危機的状況にあります(*3)。そのミズナギドリ類のなかでも、アルバトロス(アホウドリ)類はいちだんと厳しい状況にあります(22種中15種、68%)(*4)。すでに「世界ペンギンデー」が4月25日に定められていて、今回、新たに「世界アルバトロスデー」が提唱されました。

 ほとんどの時間を外洋海域で生活し、繁殖のためにだけ絶海の孤島に集結するミズナギドリ目鳥類は人間とは無縁だと、多くの人は想像するかもしれません。しかし、それは誤りで、かれらを危機的状況に追いやっているのは、じつは人間の活動なのです。

 その第一は、外洋域で行なわれる商業漁業(延縄漁業や底引き網漁業など)による「混獲」です。毎年、推定で約30万羽がその犠牲になり、成鳥・若鳥の死亡率が上がります。また、人間が繁殖地の島にもちこんでしまったネズミ類が卵やひな(ときには成鳥も)を捕食し、繁殖集団の出生率を下げています。その結果、いわばダブルパンチを受けて海鳥類の個体数は激減しました。そのほかに、人間が排出した大量のプラスチック類による海洋汚染も海鳥類の生存に影響を及ぼしています。海鳥類の大部分は海面に浮遊するプラスチック類の断片をえさと間違えて摂食してしまい、多量に取り込んだ場合には消化管をつまらせて死亡します。また、親鳥から与えられるえさに多数のプラスチック片が混じっていると、ひなの胃にそれらが蓄積して栄養不良や脱水症状を引き起こし、死に至ります(*5-1 , 5-2)。最近の研究から、誤って摂り込んだプラスチック片の量がたとえ少量であっても、海鳥に健康被害を及ぼすことが明らかになりました(*6)。さらに、気候変動による海洋環境の変化が、将来、海鳥類の生活に大きな影響を及ぼすにちがいありません。

 これまで世界各地で、こうした影響を減らすためにさまざまな工夫がなされ、鳥たちを保全するための積極的活動が実行されてきました。しかし、まだ十分とはいえません。今、この地球上でともに生きる仲間であるアルバトロス類などのミズナギドリ目鳥類やその他の海鳥類を危機的状況から救済するために、いっそうの努力が求められています。

 日本で、絶滅のおそれのある種に指定されている鳥類98種のうち海鳥類は20種で、全体の2割を占めます(*7)。また、繁殖している海鳥類は39種なので、半分が絶滅の危機に立たされています。日本でも「世界アルバトロスデー」に参加して、海鳥類の保全の取り組みを強めましょう!

「世界アルバトロスデー2020」実行委員会 
委員代表:長谷川博


長谷川 博
長谷川 博

はせがわ ひろし

東邦大学名誉教授・OWS会長
1948年静岡県生まれ。京都大学卒業。1976年から伊豆諸島鳥島に生息する絶滅危惧種オキノタユウの保護研究を続け、吉川英治文化賞、日本学士院エジンバラ公賞などを受賞。『風にのれ!アホウドリ』『50羽から5000羽へ』『アホウドリに夢中』『オキノタユウの島で』『アホウドリからオキノタユウへ』など著書多数。