特別講演

開催日時 2021年6月19日(土) 13:40〜14:10
講演時間 30分

 ©OWS

 生活の大半を海で過ごす海鳥は、小鳥類に較べると寿命が長く、産卵数が少ない等の特徴があります。繁殖地に侵入したネズミなどの捕食者や混獲などにより、海鳥は世界的に数が減っており、現在、約360種のうち約1/3の種で絶滅のおそれがあります。

 海鳥は広大な海の中から視覚や臭覚などにより餌を探します。そのため海を漂うプラスチック類を餌と間違えて飲み込んだり、プラスチックに吸着する化学物質の臭いに誘引されて摂取し、これまでに海鳥の約8割の種で摂食が確認されています。

 特に海面で採餌するアホウドリ科、ミズナギドリ科の海鳥での摂取率が高く、潜水性の海鳥では少ない傾向があります。プラスチックの摂食による直接的な影響に加えて、餌生物に取り込まれた有毒化学物質による体内汚染が進んでおり、海鳥の血中のカルシウムの減少やコレステロール濃度の上昇が報告され、現在、人への健康被害も懸念されています。

 海洋プラスチックの汚染から海鳥や私たちの健康を守るには、使い捨てプラスチックの使用量削減や海への流入を減らすことが大切です。


演者プロフィール


山本 裕(やまもと・ゆたか)

公益財団法人 日本野鳥の会 自然保護室

1991年に日本野鳥の会に入局。広島、三宅島のサンクチュアリでレンジャーとして勤務したのち、2008年より自然保護室に所属。モニタリングサイト1000(陸生鳥類調査)や日本のマリーンIBA選定に携わった後、現在は、海洋プラスチック対策と野外鳥類学論文集「Strix」の編集等を担当。