日本の絶滅危惧海鳥類

絶滅危惧IA類(CR)

写真提供:富田直樹(山階鳥類研究所)

種名

和名 クロコシジロウミツバメ
学名 Oceanodroma castro
英名 Band-rumped Storm-petrel

絶滅危険度

日本(環境省):絶滅危惧IA類(CR)
世界(IUCN):LC

法的保護

 2019年に国内希少野生動植物種に指定された。国内3ヶ所の繁殖地は、国指定(日出島、三貫島)あるいは岩手県指定(船越大島(タブの大島))の鳥獣保護区である他、三陸復興国立公園にもなっている。また、日出島と三貫島(ただしオオミズナギドリおよびヒメクロウミツバメ繁殖地として)は国指定の、船越大島(ただしタブノキ自生地として)は岩手県指定の天然記念物である。

個体数変動の原因 1)

 オオミズナギドリの営巣数の増加に伴う営巣場所の競合と、地面の踏み付けに起因する林床植物の消失と地面の荒廃・裸地化、土壌流出の進行による営巣適地の減少(日出島)、2011年の東北地方太平洋沖地震に伴う津波と崖の崩落およびその後の浸食による繁殖地の損壊(三貫島)

分布 1)

 太平洋と大西洋の熱帯・亜熱帯域に広く分布する。国内では、岩手県の日出島、三貫島、船越大島(タブの大島)の3ヶ所でのみ繁殖が確認されている。

個体数の動向、保護活動の歴史 1)2)3)4)5)

 クロコシジロウミツバメの繁殖地は、国内で3か所のみであり、近年の生息環境の悪化等による個体数の減少に伴い、環境省は2019年に本種を国内希少野生動植物種に指定した。
日出島では、固定調査区のウミツバメ類(クロコシジロウミツバメとコシジロウミツバメの巣穴は形状から区別できないため、ウミツバメ類として扱っている)とオオミズナギドリの巣穴密度を調査し、繁殖地全体の巣穴数を換算しているが、オオミズナギドリの営巣数の増大にともない2006年以降ウミツバメ類の巣穴数は明瞭な減少を示し、現在も回復していない。1980年代以降、オオミズナギドリの営巣数の増加に伴い、造巣活動や地面の踏み付けに起因するオオバジャノヒゲを主とする林床植物の消失と地面の荒廃・裸地化が進行している。また、オオミズナギドリの造巣活動によりクロコシジロウミツバメの直接的な巣の破壊も発生している。土壌流出は現在も進行し、樹木の根や岩の露出が顕著である。さらに、倒木による林床部への日照量の増加は林床植生に影響している。これらは、ウミツバメ類の営巣数減少の大きな要因と考えられている。山階鳥類研究所の佐藤文男氏は、1986年からウミツバメ類の営巣数調査を実施するとともに、1990年からクロコシジロウミツバメの繁殖地保全のため、地面にオオミズナギドリが通過できないほどの金属格子の設置やウミツバメ用の巣箱を埋設し、一定の効果を得ている。これに倣い、環境省東北地方環境事務所は、2016年3月からの土留め設置工事と併せて2017年から3年間、金属格子とウミツバメ用の巣箱を設置した。

 三貫島は、2011年3月の東北地方太平洋沖地震に伴う津波と崖の崩落によって、島西端のウミツバメ類繁殖地は半分程度が埋まるなどの被害を受け、ウミツバメ類が営巣可能な巣穴数が大幅に減少した。それ以降も侵食が進み、現在も不安定な状態にある。

 船越大島では、2011年以降、山階鳥類研究所がクロコシジロウミツバメのモニタリングを不定期に行っており、本種の繁殖を確認している。

生態 6)7)8)

 体色は雌雄同色で、頭部・背・翼・尾羽はすすけた黒色で、胸・腹はすすけた褐色である。上尾筒は白色で先端に黒褐色の帯がある。下尾筒の両側及び外側尾羽の付け根の羽毛は内弁・外弁ともに白色である。体重は43.0~59.0g、翼長は146~160mm。日出島では、5月中旬に渡来し、6月上旬に白色の卵を一卵産む。巣は地面に直径8~10cm、深さ30~100cmの横穴を掘り、最深部にやや広い産座部屋を作る。抱卵は雌雄個体で行い、抱卵期間は30日程度と推定されている。雛の多くは8月上旬に孵化し、育雛期間は約80日間と推定され、10月上旬に巣立つと考えられている。繁殖期の成鳥は、日没後に沖合から繁殖する島に戻り、抱卵交代や雛への給餌を行い、夜明け1時間くらい前には沖合に飛去する。繁殖地では、巣穴以外で日中は観察されない。採餌は海水面で行い、主に小型の魚類やイカ類を餌とする。鳥類標識調査により、これまでの最長生存期間は32年間であることが確認されている。

個体数に影響を及ぼすおそれのある要因 1)2)

・ドブネズミ

 繁殖地は、本州からドブネズミが容易に泳いで渡れる距離にある。本種は、巣穴営巣性で、個体群も小規模であるため、ドブネズミなど大型ネズミ類の侵入に対して脆弱であり、壊滅的な被害になることが考えられる。

主な保護課題 1)2)

 本種は、巣穴営巣性で、各繁殖個体群は規模が小さく、繁殖地の面積も狭いため、ドブネズミなど大型ネズミ類の侵入に対して脆弱である。そのため、これまでの定期的なモニタリングに加えて、大型ネズミ類の侵入防止と監視および侵入を確認した際の早急な対応策を検討する必要がある。

執筆者

富田直樹(山階鳥類研究所)

参考文献・資料

1) 環境省自然環境局生物多様性センター (2021) モニタリングサイト1000小島嶼(海鳥)調査 2004-2018年度とりまとめ報告書.
2) 佐藤文男 (2022) 日本の海鳥の現状と保全の課題-環境省モニタリングサイト1000海鳥調査から-.山階鳥学誌 54: 3-53.
3) 佐藤文男・鶴見みや古 (2003) オオミズナギドリによるクロコシジロウミツバメの巣穴破壊を防ぐ、金網を用いた営巣地保全に向けての試み. 山階鳥類研究所研究報告 34: 325-330.
4) 山階鳥類研究所 (2013) クロコシジロウミツバメの巣箱を用いた営巣地の保全(最終年)研究報告書. 平成25年度サントリー世界愛鳥基金助成事業.
5) 山階鳥類研究所 (2011) 東日本大震災三陸沿岸島嶼緊急海鳥調査報告書. 平成23年度公益信託サントリー世界愛鳥基金助成事業.
6) 清棲幸保 (1978) 増補改訂版 日本鳥類大図鑑Ⅲ. 講談社, 東京.
7) 水産庁 (1997) 日本の希少な野生水生生物に関する基礎資料(Ⅳ) Ⅷ. 水鳥. 日本水産資源保護協会, 東京.
8) 吉安京子・森本元・千田万里子・仲村昇 (2020) 鳥類標識調査より得られた種別の生存期間一卵 (1961-2017年における上位2記録について). 山階鳥学誌 52: 21-48.