法的保護

　この種に対する特別な保護は行なわれていないが、繁殖地となっている小笠原群島の島嶼は「国指定小笠原群島鳥獣保護区（特別保護地区）」に含まれ、また、国立公園の特別保護地区に指定（1972年）されている。硫黄列島の繁殖地は南硫黄島原生自然環境保全地域に指定（1975年）され、全域が立入制限地区になっている（自然環境保全法）。また、小笠原諸島は世界自然遺産にも登録（2011年）されている。

繁殖分布と個体数の現状と動向

　シロハラミズナギドリは、北西ハワイ諸島と小笠原諸島にのみ繁殖する北太平洋の特産種である。第二次世界大戦前は、小笠原諸島の聟島列島から硫黄列島の広い範囲で繁殖していたが（1930）、戦後の繁殖記録は南硫黄島と聟島列島の北之島のみに限られている。北之島では1978年及び、2011年にヒナが確認されており、繁殖個体群は非常に小さいと考えられる。南硫黄島では数万〜数十万組程度が繁殖していると推定されており、小笠原集団のほとんどが南硫黄島の繁殖個体群と考えられる。南硫黄島は地形が急峻であるため、常に崩落等により生息環境が大きく攪乱される可能性がある。全体的にみて、小笠原諸島のシロハラミズナギドリの繁殖個体群は不安定な状況にあると判断される。

生態

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　全長約30cm、翼開長約69cmの小型のミズナギドリ類である。上面は灰褐色で、下面は白色。翼上面にＭ字状に見える黒褐色の斑紋が出る。嘴は黒色である。小笠原諸島のシロハラミズナギドリは2月頃に飛来し、4月中旬に産卵し、5月下旬〜6月上旬にヒナが孵化し、7月〜8月頃に巣立ちするものと考えられる。南硫黄島では、標高400ｍ〜山頂まで広く分布するが、特に土壌の発達する中腹のコル周辺で密度が高かった。北之島では、土壌の深いオガサワラススキ群落で営巣が確認されている。巣立ち後の死亡率や繁殖開始年齢など、生活史生態はまだ明らかにされていない。

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個体数減少の原因

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　かつて、小笠原諸島に広く分布していた本種の繁殖地が、現在は南硫黄島及び北之島のみとなっている原因は不明とされている。しかし、両島が外来ネズミ類の分布していない島嶼であることや、ネズミ類が生息分布する他の島嶼では海鳥類への深刻な捕食害等が発生していることを考えると、シロハラミズナギドリの繁殖分布の縮小と個体数減少は、ネズミ類により引き起こされた可能性が高いと考える。

保護活動の歴史

　本種を対象とする保護活動は特に実施されていない。

個体数に影響を及ぼすおそれのある要因

　ドブネズミやクマネズミなどのネズミ類は、小型海鳥類の繁殖地となっている島嶼に侵入すると、卵やひなだけでなく成鳥をも捕食する。その結果、海鳥類の繁殖集団が急速に個体数を減らし、消滅の危機に追いやられる。2006年、小笠原諸島父島列島の島嶼で確認されたクマネズミによる食害は、アナドリなどの小型海鳥類の成鳥及び卵をほぼ喰い尽くすほど苛烈なもので、突如として、同島の小型海鳥の繁殖集団は消滅の危機に陥っている。現在の繁殖地である南硫黄島と北之島へのネズミ類が侵入した場合には、繁殖個体群を消滅させうる脅威となる。

主な保護課題

　現在、2箇所の繁殖地となっている南硫黄島、北之島へのネズミの侵入監視がきわめて重要である。同時に、南硫黄島は自然環境が不安定であることから、過去に本種が繁殖していた北硫黄島などで外来ネズミの排除を行う等して、繁殖環境を整えて、将来的に集団繁殖地の分散を図ることが必要となっている。
生態や生活史についてまだ不明が点は多く、環境省のレッドリストでは情報不足（DD）となっているが、近年の南硫黄島や北之島の調査成果から現状はある程度把握されており、これらを踏まえて、本種は絶滅危惧種として分類することが適当である。

　父島や母島ではシロハラミズナギドリ、セグロミズナギドリ、オナガミズナギドリ、アナドリなどが保護されるが、その多くは有人島の灯りに誘引され、陸上に迷い込み失速又は衝突した不時着個体であり、巣立ち後の若鳥が多い。本来、無人島への不時着は生存への脅威にならないが、有人島では不時着後のネコ（ノネコ・外飼いネコ）による捕食や、交通事故、二次的な人工構造物への衝突事故など、人為環境下での連鎖が個体生存の脅威となる。通常、不時着事故は数個体程度事故であるが、巣立ち期に、新月、濃霧が重なると、有人島における大規模な光誘引の不時着事故が発生する可能性がある。大規模事故を防ぐため、日常的な監視と予防が必要である。

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