ウミスズメ
種名
和名 | ウミスズメ |
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学名 | Synthliboramphus antiquus |
英名 | Ancient Murrelet |
絶滅危険度
日本(環境省):絶滅危惧IA類(CR) |
法的保護
1982年には繁殖地である天売島全域を国指定天売島鳥獣保護区、2011年に海鳥繁殖地が天売島特別保護地区として指定(鳥獣保護管理法)された。さらに1990年に暑寒別天売焼尻国定公園(自然公園法)、2001年に天売島の西海岸が天売島海鳥繁殖地として天然記念物に指定(文化財保護法)された。
個体数減少の原因
ウミスズメ Synthliboramphus antiquus は、北太平洋に分布し、アジア周辺ではオホーツク海、日本海、黄海で繁殖する。しかし、意図的または非意図的に持ち込まれた哺乳類の捕食が、多くのコロニーでウミスズメに深刻な影響を及ぼした。ウミスズメは陸上哺乳類がいない、または接近できないような離島や断崖で営巣するため、外敵に対して脆弱である。海外では、毛皮のために導入されたキツネやアライグマ、非意図的に侵入したネズミ、ノネコなどが捕食することで繁殖地が消失、あるいは個体数が減少するなどの影響を及ぼしている。
保護活動の歴史
天売島においては1958年に個体数調査が実施され、その後も断続的に繁殖状況を把握するための調査が実施された。
2012年からは環境省と北海道海鳥センター友の会、地元住民が中心となり調査を開始した。海鳥繁殖地の海岸線から300m沖と600m沖に設定した航路で、夜間にスポットライトセンサスを実施することで個体数を把握している。また、繁殖地周辺にセンサーカメラを設置し、捕食者であるドブネズミの影響把握調査を実施している。
繁殖分布と個体数の現状と動向
ウミスズメは、北太平洋に分布し、アジア海域ではオホーツク海、日本海、黄海において、分布、繁殖している。世界での個体数は100~200万羽と推定されている。日本において繁殖が確認された場所は天売島、ハボマイモシリ島、三貫島であるが、近年は国内での繁殖場所は天売島以外で報告されておらず、繁殖の実態は明らかとなっていない。1956年には天売島において推定500羽が確認されていたが、近年の調査では海上で約150~300羽が確認されている。2018年には249羽が確認された。
生態
ウミスズメ科の小型種で、全長26㎝、体重146~272gの海鳥。
繁殖期になると、断崖上部の樹林の土壌に巣穴を掘るか、岩の割れ目などを利用し営巣する。つがいは一夫一妻で、一腹卵数は2個で、28~33日間抱卵し、成鳥は夜間にのみ営巣地を訪れる。成鳥は日没の約90分後に巣に戻り始め、夜明け1時間前までに出巣し、月のない雲で覆われた夜にはより早く巣の周辺に戻り、より多くの個体を確認することができる。天売島においては6月上・中旬に孵化し、孵化2日後の夜には巣立ち、2か月ほど両親から世話を受ける。3~4齢で繁殖を開始する。また、鳴き方は複雑かつ多様で9種類あると言われている。
個体数に影響を及ぼすおそれのある要因
天売島においてはドブネズミが生息しているため、ドブネズミが卵やヒナを捕食することが個体数減少の要因の一つと考えられる。
主な保護課題
- 現在国内外では巣数のカウントや夜間捕獲調査、スポットライトセンサスによる個体数カウントなどの調査方法を用いて繁殖個体数調査や生息個体数調査が実施されている。しかし、天売島においてはウミスズメは崖の岩の隙間で営巣するため、繁殖地での巣の確認調査は危険を伴う可能性が考えられる。そのため現在、生息個体数把握のために、海上でのスポットライトセンサスによる個体数カウントを実施しているが、今後も継続的にモニタリングするための手法については随時効率的な方法を検討していく必要がある。
- 捕食者であるドブネズミによる影響が把握できていないため、ウミスズメの繁殖地周辺にセンサーカメラを設置し、捕食者影響把握調査を継続的に実施する必要がある。
- 北海道海鳥センターでの展示やHP、SNSでの情報発信、住民向け報告会などを実施しているが、更に多くの方に興味を持っていただけるように普及啓発活動を実施する。
執筆者
岩原 真利(北海道海鳥センター友の会)
参考文献・資料
- Anthony J.Gaston and Ian L. Jones (1998) The Auks Alcidae. Oxford University Press:214-222
- 千嶋淳2013.北海道の海鳥1 ウミスズメ類①.NPO法人日本野鳥の会十勝支部:41-43
- 環境省北海道地方環境事務所(2020)令和元年度国指定天売島鳥獣保護区におけるケイマフリ等海鳥調査報告書