日本の絶滅危惧海鳥類

絶滅危惧IB類(EN)

撮影者:鈴木 創

種名

和名 アカアシカツオドリ
学名 Sula sula
英名 Red-footed Booby

絶滅危険度

日本(環境省):絶滅危惧IB類(EN)

法的保護

 この種に対する特別な保護は行なわれていないが、繁殖地となっている南硫黄島は南硫黄島原生自然環境保全地域に指定(1975年)され、全域が立入制限地区になっている(自然環境保全法)。また、小笠原諸島は世界自然遺産にも登録(2011年)されている。

繁殖分布と個体数の現状と動向

 アカアシカツオドリは太平洋などの熱帯・亜熱帯の島嶼部に生息する大型海鳥である。2017年の南硫黄島調査においてはじめて営巣が確認された。なお、これまでも同島において樹上にいる集団の観察情報があったが、崖上であるため繁殖の確認まで至らず、 UAVの利用により営巣が確認された。南硫黄島では小規模な集団営巣地が維持されてきたと考えられるが、2017年の確認は、日本ではじめてのアカアシカツオドリの集団営巣地の報告であり、同時に、太平洋西部における本種の集団営巣地の最北端の記録ともなった。なお、アカアシカツオドリは、3亜種(S. s. sula:カリブ海と大西洋南西部で繁殖、 S. s. rubripes:インド洋と太平洋中部および西部で繁殖、S.s. websteri:中央アメリカとメキシコの西岸およびガラパゴスで繁殖)が認められているが、南硫黄島の観察個体はS. s. rubripesと考えられる。

生態

 全長約75cm、翼開長約143cmの大型海鳥である。全身白色で、初列及び次列風切りは黒色である。嘴は黒色である。顔は赤色の皮膚が露出し、目の周辺は青灰色で、足は赤色である。幼鳥や若鳥では色彩が異なる。南硫黄島における観察では、抱卵中の個体から巣立ちヒナまで繁殖ステージにばらつきが認められ、一年を通じて繁殖し、同一の集団内でも繁殖期にずれが生じるとされる繁殖傾向と一致していた。


撮影者:鈴木 創(NPO法人 小笠原自然文化研究所)

保護活動の歴史

 本種を対象とする保護活動は特に実施されていない。

個体数に影響を及ぼすおそれのある要因

 繁殖地にドブネズミやクマネズミなどのネズミ類が侵入した場合には、卵の捕食被害が発生することが予測される。特に木登りが得意なクマネズミが侵入した場合には、個体群に深刻な影響を及ぼす危険がある。

主な保護課題

 現在の繁殖地となっている南硫黄島へのネズミの侵入監視がきわめて重要である。

執筆者

鈴木 創(小笠原自然文化研究所)

参考文献・資料

川上和人・鈴木 創・千葉勇人・堀越和夫 2008. 南硫黄島の鳥類相.小笠原研究 44: 217–250.
川上和人・鈴木 創・堀越和夫・川口大朗 2018. 2017年における南硫黄島の鳥類相.小笠原研究 33: 111–127.
川上和人・鈴木 創・堀越和夫 2018. 南硫黄島におけるアカアシカツオドリSula sula集団営巣の国内初記録.日本鳥学会誌 67(2): 249–252.
籾山徳太郎. 1930. 小笠原諸島並びに硫黄列島産の鳥類について日本生物地理学会会報 1, 89-186.
Nelson JB (2005) Pelicans, cormorants, and their relatives the Pelecaniformes. Oxford University Press, Oxford.
日本鳥学会 (2012) 日本鳥類目録改訂第 7 版.日本鳥学会,三田.