日本の絶滅危惧海鳥類

絶滅危惧II類(VU)

撮影者:堀越和夫(小笠原自然文化研究所)
西之島

種名

和名 オオアジサシ
学名 Sterna bergii cristata
英名 Greater Crested Tern

絶滅危険度

日本(環境省):絶滅危惧II類(VU)
世界(IUCN):LC

法的保護

 鳥獣保護管理法の希少鳥獣、日豪渡り鳥保護協定の対象種である。繁殖地の一つ、西之島は小笠原国立公園、国指定西之島鳥獣保護区(集団繁殖地)に保護指定されている。

繁殖分布と個体数の現状と動向

 本種は、アフリカ南東部からペルシャ湾、東南アジアにかけてのインド洋と太平洋の西部において、熱帯から亜熱帯域の海岸や島で繁殖する。5亜種に分類され、オーストラリア、東南アジア、中国、日本、フィジーまでの個体群はSterna bergii cristataとされる。営巣環境は、砂礫浜やサンゴ礫の海岸、草地等である。国内の繁殖地は、現在、小笠原諸島の西之島、尖閣諸島の北小島の2か所のみで、以前は奄美諸島の徳之島、南大東島でも繁殖していた。愛知県では秋に、主に渥美半島の北部沿岸を定期的に通過する個体群がみられる。

 西之島の繁殖個体群は、2004年7月の調査では100~150つがいが繁殖すると推定され、1997年の推定結果とほぼ一致していた。その後、2013年から起きた大規模な火山活動により個体群は影響を受けたと考えられるが、2022年7月の総合学術調査では火山活動前の約150つがいの営巣が確認され、北部の海岸では約50羽の雛が確認された。尖閣諸島の北小島は、1979年に約250羽、1991年には230羽と139~151羽のコロニーがあり、繁殖つがい数は約370~380羽と推定されているが、近年、立ち入りができず情報が不足している。

 世界的には、(一部の個体群は情報不足であるものの)現状は安定している。推定個体数は約150,000~1,100,000羽で、この中には中国での繁殖個体約100~10,000つがい、渡り性個体約50~1,000羽、台湾の繁殖個体約10,000~100,000つがい、渡り性個体約1,000~10,000羽、日本での繁殖個体約100~10,000つがい、渡り性個体約50~1,000羽が含まれる。

生態

 全長約46cm、翼開長約104cmの大型のアジサシ類で、オニアジサシ、アメリカオオアジサシに次いで三番目の大きさである。雌雄同色で、翼の背面上部から尾羽は灰色、下面は白色である。頭頂から後部は黒色、冠羽状で、嘴は長く黄色で足は黒い。

 日本では夏鳥として、4月中旬~下旬に渡来する。一夫一妻で繁殖し、5月上旬~中旬に通常1卵(まれに2卵)を産卵、6月上旬~中旬に孵化し、8月上旬に渡去する。食性は動物食で、主に魚類、イカ、甲殻類などを採食する。

個体数減少の要因

 尖閣諸島の北島と南小島では、かつて大規模な卵の採取が行なわれていた。

 過剰な漁業による餌資源の減少、原油流出事故による海洋汚染、台風や熱帯低気圧による高波、気候変動によって生じる海洋環境の変化や海面上昇による繁殖地への影響が懸念される。西之島では継続する火山活動による環境変化が大きな脅威となっている。

保護活動の歴史

 国内では繁殖地の西之島が、小笠原国立公園(西之島)、国指定西之島鳥獣保護区(集団繁殖地)に指定されているが、その他に具体的な保護活動は進められていない。

主な保護課題

  1. 西之島では火山活動の継続、北小島については領有権問題で、個体群の現状把握が困難となっている。
  2. 西之島、北小島は周辺には他の繁殖地はなく、太平洋西部の海域で北限に相当する孤立した繁殖地である。

執筆者

山本裕(公益財団法人日本野鳥の会)

参考文献・資料

バードライフ・インターナショナル東京. 2016. マリーンIBA白書 海鳥から見た日本の重要海域. バードライフ・インターナショナル東京. 東京.
BirdLife International (2022) Species factsheet: Thalasseus bergii(online). Downloaded from http://www.birdlife.org on 5/12/2022.
Enticott, J. & Tipling, J. 1997. Seabirds of the World: the complete reference. New Holland. Singapore.
環境省編. 2014. レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生生物 2 鳥類-. ぎょうせい. 東京.
環境省関東地方環境事務所. 2022. 令和4年度西之島総合学術調査結果概要について.
https://kanto.env.go.jp/press_00006.html(2022.12.20確認).
川上和人・山本裕・堀越和夫. 2005. 小笠原諸島西之島の鳥類相. Strix 23: 159-166.
Kohno, H., Sakaguchi, N. & Chiba, H. 1997. The breeding status of Crested Tern in Japan. J. Yamashina Inst. Ornithol. 29: 91-96.