日本の絶滅危惧海鳥類

絶滅危惧II類(VU)

撮影者:奴賀俊光(公益財団法人日本野鳥の会)

種名

和名 エリグロアジサシ
学名 Sterna sumatrana
英名 Black-naped tern

絶滅危険度

日本(環境省):絶滅危惧II類(VU)
世界(IUCN):LC

法的保護

特になし。

繁殖分布と個体数の現状と動向

 奄美大島以南が主な繁殖地である。全体的に個体数は減少傾向にある。

 モニタリングサイト1000海鳥調査報告書によると、奄美大島では、2005年以降、個体数、巣数は減少傾向にある。沖縄本島でも減少傾向にある。宮古島では、2009~2018年の10年間、400~500羽で維持されている。八重山諸島では、各島の全域に分散して営巣するため、個体群規模を把握し続けることは困難であるが、2001年以降ほとんどの島で減少傾向にある。

生態

 全長約30cmの雌雄同色の中型のアジサシ類。全体的に白色だが、背、翼の上面はごく淡い青灰色。最外初列風切外弁は黒い。過眼線から後頭部は黒色。尾は長く、中央尾羽は淡青灰色で他は白い。嘴は黒く、先端はわずかに黄色。足は黒い。

 インド洋および西太平洋の熱帯・亜熱帯域に分布する。日本には夏鳥として奄美、沖縄、宮古、八重山諸島に飛来し、沿岸域のサンゴ礁や内湾の小島、植生のない岩礁や砂浜などの比較的視野の開けた場所で集団で繁殖する。ほとんどの繁殖地は多くても30巣程度で、まれに100巣を超える。岩礁のくぼみやサンゴ礫場に営巣する。八重山諸島では5月中旬頃に飛来し、6月中旬頃から産卵する。一腹卵は1~2卵で稀に3卵である。雌雄交代で抱卵する。幼鳥は親鳥とともに渡去する。遅くても10月上旬までには全ての幼鳥と成鳥が渡去する。

 採餌の間は頻繁にホバリングし、軽快に飛び込んで水面直下から餌をとる。繁殖期の主な餌生物はキビナゴ類やトウゴロウイワシ類で、トビウオ類、サヨリ類、スズメダイ類の幼魚も捕食する。

個体数減少の要因

 人為攪乱、鳥類による捕食、台風などの気象の影響がある。人為攪乱については、営巣地である島や岩礁に、海水浴や釣り、潮干狩り目的のレジャー客の上陸、写真撮影を目的としたバードウォッチャーの上陸が攪乱となっている。観光客がコロニー内に入り、卵を手に取ってしまうこともある。また、テグスに絡まってベニアジサシが死亡していた例もある。鳥類による攪乱としては、ハシブトガラスによる卵や雛の捕食、ハヤブサの襲撃による繁殖撹乱などがある。卵や雛の捕食や捕食者の侵入が頻繁に起こると、親鳥の抱卵、育雛の放棄が観察される。気象の影響としては、台風や熱帯低気圧に伴う波浪や海面上昇、風雨により卵や雛が流されたり、冷えて死亡する。台風による高波で営巣地が全滅した例もある。また、陸域からの赤土流出などによる採食海域の水質悪化も懸念されている。

 漁業関係者からは、アジサシ類の主な餌となるキビナゴの水揚げ量が近年減少しているという話もあり、地球規模の環境変化が、餌生物の減少を引き起こし、アジサシ類の減少に影響を与えている可能性も考えられる。

保護活動の歴史

 レジャー客の営巣地への接近や上陸が頻繁に確認されていることから、人為攪乱を少しでも減らすために、沖縄県や渡嘉敷村、環境省、山階鳥類研究所などで連絡会議を開き、観光施設の職員を対象にアジサシ類保全上の留意点などの勉強会が毎年行われている。また、繁殖期間中に営巣地に立ち入らないように、観光業者や渡船業者など関係各所に協力を求めると同時に上陸自粛の看板とロープを設置したり、啓発リーフレットの配布が行われたりしている。

主な保護課題

  1. 人為攪乱による営巣放棄。
  2. 分散して繁殖し、また、年により繁殖地を替えることから、保護区の設定が困難。

執筆者

奴賀俊光(公益財団法人日本野鳥の会)

参考文献・資料

環境省(編). 2014. レッドデータブック2014‐日本の絶滅のおそれのある野生生物‐2鳥類. ぎょうせい, 東京.
環境省自然環境局生物多様性センター. 2019. 平成30年度モニタリングサイト1000海鳥調査報告書. 環境省自然環境局生物多様性センター, 山梨.
高野伸二. 2015. フィールドガイド日本の野鳥増補改訂新版. 公益財団法人日本野鳥の会, 東京.
BirdLife International. 2022. Species factsheet: Sterna sumatrana. Downloaded from http://www.birdlife.org on 24/11/2022.