イベント2022

オンライン講演会

開催日時 2022年6月19日(日) 13:45〜14:15
講演時間 30分

伊豆諸島鳥島のアホウドリ(左2羽)と
センカクアホウドリ(右2羽)(撮影:今野美和氏)

 アホウドリは20世紀半ばに一度は絶滅が宣言されるほど個体数が減少した鳥です。これまで「1種」として国内外で保全の対象とされ、個体数は比較的順調に回復してきています。現在、主に伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島の2か所で繁殖しています。

 一昨年、私たちは鳥島と尖閣諸島の集団は別種であるとする論文を発表しました。そして、この種の代名詞となってきた鳥島の集団を「アホウドリ」、尖閣諸島の集団を「センカクアホウドリ」と呼ぶことを提案しました。

 最初にみつけた両種の違いは、両種が基本的に異なるタイプのミトコンドリアDNAの塩基配列を持つことです。その遺伝的な差は同じ科の他の近縁種間よりも大きいことが分かりました。また、同じ場所で繁殖した場合,鳥島由来と尖閣諸島由来の鳥はそれぞれ同じ出身地の個体をペアに選ぶことや、くちばしの形状などの形態的特徴からも両種が識別できることも分かりました。

 このような「2種」の遺伝的、生態的、形態的違いについて紹介するとともに、今後の研究の課題と展望をお話します。

演者プロフィール


江田 真毅(えだ・まさき)

北海道大学総合博物館教授

筑波大学人文学類で考古学を、東京大学大学院農学生命科学研究科で生態学を、九州大学大学院比較社会文化研究院で分子生物学を学び、鳥取大学医学部では解剖学教育に携わる。遺跡から出土した鳥の骨から過去の鳥類の生態を解明する考古鳥類学と、その情報をもとに人々の生活を復原する動物考古学を専門とする。2015年日本鳥学会黒田賞受賞


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