『天売島におけるウミガラス保護の経緯と現状』
岩原 真利(環境省羽幌自然保護官事務所)
開催日時 | 2022年6月19日(日) 15:05〜15:35 |
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講演時間 | 30分 |
オロロン鳥の愛称で親しまれているウミガラスは太平洋と大西洋の北部に分布し、亜寒帯の離島や海岸の断崖で集団営巣するウミスズメ科の大型種である。
亜種inornataはオホーツク海沿岸、カムチャッカ半島、千島列島、ベーリング海沿岸、朝鮮半島北部の小島で繁殖し、日本国内では現在天売島の限られた崖の窪みのみで繁殖している。天売島での飛来数は、1963年に8000羽と推定されたが、1960年代後半に入り激減し、1990年代になると十数羽が残されるだけとなった。そのため1987年以降、北海道、環境省、羽幌町、地元関係者、研究機関等が協力し保護対策を実施してきた。
その後、環境省が主体となり2001年にウミガラス保護増殖事業計画を策定し、デコイ、音声による社会的誘引、捕食者対策を継続的に実施してきた。その結果、ウミガラスは徐々に増加し、現在は90羽程度まで回復し、2011~2021年にかけて毎年7~25羽の雛が巣立ちに成功している。しかし、依然として個体数が少ないことから、天売島のウミガラスが自然状態で安定的に存続できる状況になることを目指し、今後も保護対策を継続していく。

ウミガラス(撮影者:岩原真利)
演者プロフィール

岩原 真利(いわはら・まり)
環境省羽幌自然保護官事務所
野生動物に関心があり、動物行動学を通して生態系保全に携わりたいと思い動物行動学を熊本の大学で学ぶ。2015年から霊長類の研究施設に勤務。2017年からは環境省羽幌自然保護官事務所に勤務し、天売島における海鳥が自然状態で安定的に存続できる状態をめざして、ウミガラスやケイマフリ、ウミスズメなどの希少鳥類の生息状況調査および保全対策に取り組む