講演会2023

対面&オンライン

開催日時 2023年6月18日(日)10:30〜11:00
講演時間 30分
オキノタユウ(アルバトロス)飛翔

オキノタユウ(飛翔)

一生のうち少なくとも一部を海洋環境で生活する鳥を「海鳥」と呼ぶ。広大な海洋は人間の活動が集中する陸地から離れているので、海鳥類は人間活動の影響を受けにくいと推測するだろう。しかし、それは誤りで、世界の海鳥類およそ360種のうち約3割に当たる110種が危機的状況にある。日本でも周辺海域で繁殖する45種余りのうち約4割、19種が絶滅危惧種で、準絶滅危惧種や情報不足の種を含めると24種になり、約5割が消滅の危機にある。

 海鳥類はたいてい集団で繁殖するので、かつて卵が大量に採取され、羽毛や剥製のために成鳥が乱獲された。また、原油やプラスチック類による海洋汚染によって海鳥類は死に追いやられ、健康被害を受けてきた。さらに、流し網・曳網・延縄など大規模漁業によって海鳥類が毎年おびただしい数で「混獲」されている。人間活動にともなって繁殖地の島に持ち込まれたネズミ類などの外来捕食者は、しばしば繁殖集団を壊滅させる。

 こうした海鳥類の苦境を知り、それらの保全と海洋生態系の回復を目指して積極的に取り組まなければならない。


プロフィール


長谷川 博(はせがわ・ひろし)

東邦大名誉教授・NPO法人OWS会長

東邦大学名誉教授、OWS会長、WAD & SW実行委員長。1948年静岡県生まれ。
京都大学大学院で動物生態学を専攻し、1976年から2018年まで伊豆諸島鳥島で絶滅危惧種オキノタユウの保全研究に取り組んだ。
吉川英治文化賞、日本学士院エジンバラ公賞、山階芳麿賞などを受賞。近著に『アホウドリからオキノタユウヘ』(新日本出版社、2020)



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